おさんぽで、首がしまることは、もうない。
自ら手織りした布を用い、わんちゃんの心と体に負担をかけにくい形のハーネスをオーダーメイドで製作しています。 のんびりゆったりおさんぽできる3mリードもおすすめです。

Yarn Yawnにできること


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「自然でしあわせな犬」と生きることを目指し、その一環として自然散歩をはじめようとしたとき、 こころの持ちようももちろん大切ですが、どんな道具を用意するかも同じくらい重要な意味を持ちます。

道具は思っている以上に持つ者の行動を規定します。
飛行機やハングライダーがなければ人は空を飛べません。
ハサミを持っている限り、ものとものとを貼りつけることは出来ないでしょう。
着物を着たまま全力疾走することは出来ませんし、目の前に刃物や鈍器がなかったら、起こらなかった犯罪もいくつかはあることでしょう。
携帯やスマホを変えるたびに使いにくいと感じはしませんか。
それはあなたの手が携帯に合わせた動き方を覚えていくからです。
携帯を使うのはあなたですが、あなたの手は携帯によって作り変えられていると言うこともできます。

「形から入る」という言葉があるように、あることをはじめるとき、とりあえず形を整えることは無意味なことではありません。
あることとに適した形があるのなら、その形を取り入れることで、その形があなたを導いてくれる部分があることでしょう。
エプロンをつけることで汚れを気にせず料理ができます。
鉢巻を巻くことで気合いが入ることもあるかもしれません。
バットなしで野球をするのは難しいことですし、バットを持てばとりあえず振りたくなるのが人情というものです。

それでは、自然散歩に適した道具とはなんでしょう。
わたしは、ある程度の長さがあるリードと、犬のからだに負担のかからないハーネスだと考えています。
順に検討していきましょう。


まずはリードです。

「自由なおさんぽ」といってパッと思いつくのはリードをつけないことですが、現在、日本ではリードをつけずに犬のおさんぽをすることは認められていません。
道や公園など多くの場所でオフリードは禁止されていますし、はっきり禁止と掲げられていない場所でもオフリードは避ける方が今の日本の常識には合致しています。
あえてオフリードに挑むという選択もあるとは思いますが、わたしの考える自然散歩のあり方は、あくまでも社会のルールの中で犬の自然な行動を実現しようとするものです。
ルールを無視することは、その時はよくても長期的に見て犬にとってマイナスの方が大きいように思うからです。
オフリード禁止の公園で犬を放して歩くことが問題視され、公園が犬の立ち入り禁止になってしまったら、その犬だけでなく多くの犬がお気に入りのおさんぽの場を失います。
道でも同じで、オフリード散歩を決行することで犬に対する風当たりが強くなり、結果として犬の生きる場所を狭めてしまう可能性があります。
さらには交通事故や咬傷事故など、リードを着けていれば防げたかもしれない万が一の事故が起こったら、悔やんでも悔やみきれません。
事故はリードをつけていても起こり得るものですが、リードをつけていない方が可能性は高いように思いますし、そうなったときに「もしリードをつけていれば…」と後悔したくはありません。

また、自信を持ってオフリードでのおさんぽを実行するには、自信を持つに足るだけのトレーニングが必要となってくると思います。
トレーニングをすることとリードをつけること、どちらがより犬の自由に踏み込んでいるかを判断するのは難しいことです。
異論もあるとは思いますが、わたしの個人的な意見を述べると、オフリードでも完全にコントロールがきく状態というのは見えないリードを着けられているのと同じ状態のように感じられます。
広大な私有地の中でもない限り、リードの可視不可視を問わなければ、オフリードでのおさんぽをすることは今の日本の社会においては現実的ではないと言えるでしょう。

ここでは目に見えるリードを着けることを選んだということにして、自然散歩にどのようなリードが適しているのか考えていきましょう。

リードの一方の端は飼い主さんが握っています。
おさんぽをする犬は、リードの長さを半径とした飼い主さんの周りの円の中を動くことができます。
実際には人間の手の位置と犬の体高とに差がありますから、犬の行動半径はリードの長さを確実に下回ってくることでしょう。
単純に考えて、リードが長ければ長いほど犬の行動半径が広がっていきます。
しかし、あまりに長すぎるようではリードが絡まる危険もありますし、リード自体の重さが犬の負担になることも考えられます。
短すぎず、長すぎず、ちょうどいい長さを見つけることが重要です。

おさんぽ中は飼い主さんも動いているので、犬が動ける円の位置は常に変わっていきます。
どれほど短いリードを着けていても支点となる人間が移動することによって、理論上、犬はあらゆる場所へ移動することができます。
そう考えると、リードが短いということは犬の行動を狭める理由とはならないようにも思えてきますが、

・人間はあらゆる場所に移動するわけではないということ
・人間と犬との移動スピードは必ずしも一致するものではないということ

この2点からわたしは短いリードは自由散歩にとって望ましいものではないと判断します。

ふつうのおさんぽでは、人間は自分の通りたい道を、自分の歩きたいペースで歩きます。
道の中のどの位置を歩くかということも、人間の希望に一任されています。
人間が位置取りを決めるということは、人間の選ばなかった道の部分を、リードの半径を超えて犬が歩くことは出来ないということです。
人間が道の右端を歩こうと思ったとき、道幅よりもリードが短かったら、犬は左端には行けないわけです。
支点の位置を自由に動かすことが出来ない以上、実際のおさんぽでは犬はあらゆる場所へと移動できるわけではなく、「人間の選んだ通り道+リードの長さ」に含まれた場所のみを移動することになります。
この場合、リードが短ければ短いほど犬の行動半径が狭まっていくことはお分かりいただけると思います。

一方、自然散歩では、人間が自分の通りたい道を選ぶことはしません。
犬が思うように動いても危険のない場所でおこなうのが自然散歩の基本ですから、犬は自分の行きたい方に、行きたいように動き、人はその後ろをついていくようにします。
支点の位置が犬の行動にあわせて移動していきますので、物理的に行けないところはともかく、短いリードを着けながらでも犬は行きたいと思う場所へ自由に移動することができます。

しかし、ここでふたつめに挙げたスピードの問題が出てきます。
犬が駆け出したとき、あなたは反射的に犬と同じスピードで駆け出すことが出来るでしょうか。
あなたがかわいいお花に気を取られて一瞬足を緩めたとき、犬が変わらない速さで歩き続けていたらどうでしょう。
逆に、犬が地面のにおいに気を取られたとき、あなたが気づかずに同じ速さで歩いているということも考えられます。
リードが短いと、すぐにピンと張ってしまいますね。
どちらかが足を止めるような状況でなくても、歩くペースが少し違うだけで、短いリードだと簡単に長さの限界がきてしまいます。

張ったリードの負担は、人間の手にもかかってきますが、犬にもかかります。
リードの犬側の端が首輪についている場合は、首という大切な器官がその力を受け止めることになります。
犬は人間より小さいことが多いことを考えると、リードが張ってしまったとき、人間は手に小さなダメージを、犬は首に大きなダメージを負うことになると言えます。
首輪の是非についてはあとで検討しますが、たとえ首輪を使っていなかったとしても、リードが張るということは犬の体に物理的な力がかかるということです。
その物理的な力によって、犬が行っていた、あるいは行おうとしていた行動は強制的に停止されてしまいます。
どんなに気をつけて歩いても、移り変わる犬の歩行のスピードと常に同じ速さを保ち続けることは不可能といっていいでしょう。
それでもリードの長さに余裕があれば、リードが張る可能性を下げることができます。

市販されているリードの多くは1.2m、少し長めのものでも1.8mくらいです。
身長160cmのわたしが体高15cmのぬいぐるみ(小さめのチワワくらい)にリードを着け、手を伸ばさない状態でリードをピンと張り、わたしの足元から犬までの距離をはかってみたところ、1.2mのリードでは75cm、1.8mのリードでは150cmという結果が出ました。
わたしの一歩はだいたい50cmです。
1.2mのリードを着けているとき、犬が立ち止まったことに気づかずわたしが進み続けたら、2歩目の足が地面につく前に犬を引きずりはじめることになるでしょう。
1.8mのリードでも、4歩目の足を上げる前に、わたしと犬との間のリードは張り切っていることになります。
わたしが普通に歩くペースは5秒間に約10歩ですので、2歩では1秒、4歩だと2秒かかる計算です。
せっかく自然散歩をしようとしても、短いリードを使っていると、ほんの1~2秒犬から目を離した隙に、思わぬ形で犬の自然な行動を中断させてしまうことになるのです。

長いリードとしては、10m以上のロングリードが市販されています。
50m、100mというものもあるようですが、15m前後のものが人気のようです。
これだけの長さがあれば、犬の行動半径という面では申し分ありません。
ロングリードの問題点は、重たいこと、絡まりやすいことの2点です。
当然のこととして、長ければ長いほどリードは重たくなります。
ロングリードの多くは素材などを工夫することで軽さを追求していますが、どんな素材を使っても長さ分だけの重さは残ってしまいます。
1.2mのリードより軽い12mのリードを作ることは、市場に流通する技術の範囲では難しいでしょう。
リードの重さの一部分は人間が担うことになりますが、犬もまたリードの重さの一部分を背負うことになります。
リードが重ければ重いほど、つまりリードが長ければ長いほど、犬にかかる重量の負担は大きくなっていくわけです。


次は、絡まりやすさについてです。
わたしは織物をするので糸を扱いますが、糸はピンと張った状態が一番絡まりにくいものです。
どれだけ長いリードでもピンと張っていれば絡まることはないでしょうが、今はリードがむやみに張ることを避けようとして長いリードを検討しているのですから、ロングリードは多少なりともたるませた状態で使用することを前提とします。
長ければ長いほどリードは絡まりやすくなりますし、絡まったリードは実寸よりも短くなるものです。
どこでどう絡まっているのか、今の実効長がどれくらいあるのか一目では分かりませんから、思わぬ拍子にリードが張る可能性があります。
リード自体が絡まるのでなくても、木の根っこや段差など、何らかの障害物にリードが引っかかってしまうかもしれません。
10m先で切り株にリードが引っかかっていることに人間が気づいても、15m先を行く犬が気付かずに前進を続けたら、人間が切り株から外す前にリードはピンと張り、犬の前進運動は急停止を強いられることになります。
犬はまっすぐ前にだけ進むわけではありませんから、進んだり、戻ったり、曲がったり、回ったり、ゴロゴロ転がったりしているうちに、犬の足や体にリードが絡みつくこともあります。
場合によっては怪我をしてしまうこともあるでしょう。
人間が足を引っ掛けて転ぶこともあり得ます。
もちろん、そうなるだけの長さのあるロングリードは、リードの端を持ってプラーンとさせて使うものではありません。
飼い主さんが手元でたくしたり、緩めたり、犬との距離や状況を考えつつ、適宜調節しながら使用するものです。
自分と犬との間に伸びている部分だけでなく、手元に巻き上げたリードの管理もしなければなりません。
こうしたリードさばきの難易度は、リードが長くなればなるほど上がります。

では、フレキシブルリードはどうでしょう。
ある程度以上の長さがある上、持ち手を握っているだけでリードが勝手に伸び縮みしてくれます。
とても便利な道具に思えますが、このリードには難点があります。
伸び縮みするということは、伸びているときにもリードには巻き戻るための力がかかっているということです。
リードが緩んでいる状態がなく、人間が引こうとしなくても、常にリードが引かれている状態になってしまいます。
また、巻かれている部分が持ち手の中に収納されるので、残りどれくらいの長さがあるのか分かりにくく、気を許していると突然リードが張ってしまうことになります。
リードさばき不要という便利さが、かえって人間の注意力を散漫にしてしまう面もあると思います。
人間にとっては不便でも、ただの紐状のリードの方が、犬にとってはよい道具だと言えるでしょう。

短すぎてはダメ、長すぎても扱いが難しい。
両方のバランスを考え、わたしが自然散歩に最適とするリードの長さは3mです。
10m以上のロングリードを使っても、実際にはリードの長さのすべてが常に有効に機能しているわけではありません。
使う中で飼い主さんが手元で巻き取って持っていたり、地面でウネウネしたりしている部分があります。
その部分をカットして、犬が自由に動いても簡単にはリードが張らない長さというのが、だいたい3mくらいだと思うのです。

3mあれば、一瞬気が散ったくらいではリードは張りません。
わたしが先ほどのぬいぐるみに3mのリードをつけて最大限距離をとると、足元からぬいぐるみまで280cmありました。
通常の歩幅にして5~6歩、約5秒の猶予があります。
ふとしたタイミングで1秒よそ見をすることはあっても、気を付けて歩いている中で5秒間よそ見をすることはなかなかありません。
犬が急に立ち止まっても、駆け出したとしても、リードが張りきるまでに対応する時間が十分あります。
また、駆け足になれば約3歩、1秒とかからず犬の間近まで接近することができます。
3mリードもロングリードと同じように手元で調節しながら使用します。
常に3m分のリードが伸ばされているわけではありませんが、万が一リードが伸びた先で犬に危険が迫ることがあっても、素早く近づいて問題に対処することが可能です。

自然散歩に使うリードの長さを決めるとき、重要なのは犬の自由と安全、それらを守るべき飼い主さんの能力とのバランスです。
わたしなりにバランスを考え、3mという長さをおすすめしてはいますが、リードは必ず3mでなければならない!ということではありません。
犬の体格や足の速さ、飼い主さんの注意力や身体能力によっては5mくらいあってもいいかもしれません。
わたしは自然散歩は特別なおさんぽではなく、日常のおさんぽとして実践していくものだと考えます。
そのため、日常のおさんぽで使いこなせない長さのリードは、自然散歩のリードとしても長すぎるものだと捉えています。
長すぎず、短すぎず、犬の負担にならず、自分の手に余らない、ちょうどいい長さを見つけてあげてください。


さて、とりあえず3mのリードでおさんぽに行くことに決めたとして話を進めます。
リードの一方の端は飼い主さんが手に持つわけですが、もう一方の端を何につけるべきか、考える必要がありますね。
犬にどのような犬具を着けておさんぽに行くか、という問題です。
首輪でしょうか、それともハーネスでしょうか。
首輪にもハーネスにもいろいろな種類がありますが、どれを選ぶことが一番自然散歩の目的に合致しているのでしょう。


自然散歩の目的は、犬が犬らしく自然に行動する時間と場所とを作りだすことです。
なぜそうするのかと言えば、犬と生きることを選んだひとりの人間として、出来るかぎり犬をしあわせにしたい、少なくとも "5 Freedoms" だけは実現していきたいと考えるからです。
そこで、"5 Freedoms" についてもう一度おさらいしてみましょう。


動物の5つの自由 The Five Freedoms for Animal

(1)飢えおよび渇きからの自由 Freedom from Hunger and Thirst 
(2)不快からの自由 Freedom from Discomfort  
(3)肉体的苦痛・損傷・疾病からの自由 Freedom from Pain, Injury or Disease 
(4)正常な行動発現の自由 Freedom to behave normally 
(5)恐怖および精神的苦痛からの自由 Freedom from Fear and Distress


この5つは、分かりやすさや実現しやすさの点で違いはありますが、どれも同じだけ重要なものであるとわたしは考えます。
どれにも相関性があり、一見両立しないように見えるときがあっても、本質的には一方をとることで一方を捨てるような関係にはありません。

まず、どのような犬具を選ぶかというのは(2)が求める適切な飼育環境の提供という点に関わっていますね。
首輪は犬の首に着けるものです。
リードが首輪につなげられていると、リードにかかる力は犬の首にかかることになります。
前のページでも書きましたが、犬に限らず「首」というのは非常に大切な器官です。
どれほど気を付けて自然散歩をしていても、リードが張ることが絶対にないと言い切ることはできません。
力がかかる可能性のあるものを首につけておくのは(3)の観点からして避けるべき選択です。
首にしかつけておくことの出来ないならまだしも、リードとつなげる先の犬具としてハーネス(胴輪)というものがこの世にある以上、あえて首輪を選択する理由はないものと考えます。

意図せずに首をしめてしまう可能性があるだけでも首に巻くタイプの犬具は避けるべきですが、意図して首をしめるためにあるチョークチェーンやハーフチョークは絶対に使用するべきではないでしょう。
これは(3)だけでなく明確に(5)とも関わる問題です。
「首をしめて痛めつけてやれ!」とまで思わなくても、首をしめることのできる道具を使えば、故意であれ偶然であれ人は必ず犬の首をしめます。
自然散歩は主に(4)の実現を目的としているものですが、(4)は(4)だけで独立しているものではありません。
少なくとも(3)、場合によっては(5)にも抵触する首輪という犬具は、自然散歩の道具としてふさわしいものとは言えないのです。


続いてハーネスを検討します。

ハーネスにも多くの種類があります。
胸に回るテープが首にかかるタイプのものだと、首輪と同じようにリードにかかる力を犬の首で受け止めさせることになってしまいます。
これでは首輪を避けてハーネスを選んだ意味がありませんね。
ハーネスを選ぶときは、それぞれの構造をよく見て、前胸のパーツが胸骨に当たるタイプのものを探しましょう。
着けてみると分かりますが、頭と胴を別々の穴に通す8の字型のハーネスは、完全に首にパーツがかかっています。
8の字でも、ふたつの穴が独立したものならただの首輪と同じです。
ふたつの穴を作るテープが繋がっているものだと、リードに力がかかった場合に頭を通す穴が縮まりますので、こちらはチョークチェーンと同じ構造を持っていると言えます。
どちらにしてもこの型のハーネスはおすすめしませんが、一本のテープでふたつの穴を作っているタイプのものは、実はチョークチェーンと同程度に犬の自由を侵害しているものとお考えください。

お洋服にリードフックが付いているタイプのものもあります。
これらはものによって形が多岐に渡るため一概には言えませんが、前胸を覆う生地の上の部分が胸骨端を超えていないか、よく確認しましょう。
犬の前胸を触ったとき、からだの真ん中にちょっと出っ張っている骨があると思います。
これが胸骨の端っこです。
犬に鎖骨はありませんが、人間で言う鎖骨の真ん中あたりを探してみてください。
人間では鎖骨の真ん中が窪んでいるあたりに、犬の場合は胸骨が顔を出しています。
この骨よりも上には首を守る骨がありません(首を支える骨はありますが)。
パッと見て首というより胸というべき位置にテープが当たっているように見えても、胸骨より上にテープや生地がきていると、力が加わったとき、その力は直に喉にかかってしまいます。
自分のからだで試してみましょう。
人間の場合は胸骨端は触れませんので、鎖骨のすぐ上あたりを押してみてください。
一般に「首をしめる」位置よりもだいぶ下ではありますが、これでもかなり苦しいですよね。
しかし、鎖骨や、くぼみの下の骨を押しても別に苦しくはありません。
胸骨端より上のテープに力がかかるというのは、鎖骨の上を強く押されている状態だと思っていただければ、犬のからだにかかる負担が想像しやすいと思います。

前胸に縦にテープの走っている、<|>こういう形のハーネスもあります。
縦のテープを挟んで、胸と腹をテープが横に通っているものです。
この形のハーネスの胸側のテープは、胸骨端をかすめているか、すぐ上を通っていることが多いようです。
胸骨の両側には肩甲骨があります。
立位ではテープが肩甲骨にかかり、喉をしめないように思えても、肩甲骨は歩行時には動く骨です。
肩甲骨でテープを支えているようだと、おさんぽ中にテープは簡単にずれ、結局は喉をしめてしまうことになります。
それを避けるには、胸骨の中心にしっかりテープが当たっている必要があります。


ポリスハーネスと呼ばれるハーネスもあります。
8の字や<|>に比べて見かける機会は多くありませんが、最近少しずつ増えている形です。
このハーネスは胴を一周する輪に対し、ほぼ垂直に前胸のパーツが取り付けられており、横から見ると寝かせたTのような形をしています。
この形のものは、サイズさえ合っていれば、前胸のパーツが胸骨端上を通っていることが多いです。
わたしがハーネスを選ぶ際に最も重要だと考えるのは前胸のパーツの位置です。
その一点が満たされているだけで、この形のものは他のハーネスよりも優れたハーネスであると考えています。

ここまでをまとめると、

首輪…×
8の字ハーネス…×
お洋服ハーネス…△
<|>ハーネス…△
ポリスハーネス…〇

ということになります。

首に衝撃を与え、頸椎や気管に損傷を与えうるものを×、 首に衝撃は与えないものの、喉をしめて苦しくなる可能性のあるものを△、 そうではないものを〇としました。
首や喉をしめられることは苦痛です。
「しめる」という力がかかっている以上、物理的な制約が当然そこにはあるのですが、たとえ制約がなかったとしても、苦痛を感じながら正常な行動を表現することはできません。
肉体的な苦痛は精神的苦痛にもつながります。
"5 Freedoms" の(3)(4)(5)、いずれの観点から考えても、△以下のものは自然散歩の目的に合致しないものであるとわたしは考えます。
他にも選択肢があるにも関わらず、あえて苦痛を与える道具を選ぶということは、快適な生活環境の提供を求める(2)にも抵触している可能性があるでしょう。
このような理由から、わたしは自然散歩にはポリスハーネスの使用をおすすめします。


ただ、ポリスハーネスにもいくつか問題があります。
ポリスハーネスに限ったことではありませんが、ハーネスは首輪よりも構造が複雑です。
基本となるテープの分量が首輪より多くなりますし、首輪なら一か所で済むサイズ調整のパーツも増えてしまいます。
首輪にくらべて重量が増す上に、調整パーツがちょうど足を動かす部分に当たってしまったり、肌に擦れてしまったりすることもあります。
さらに、ポリスハーネスについては、小さいサイズがないという問題もあります。

日本ではまだ一般的ではないため、海外のメーカーのものが販売されているのですが、外国製なだけに超小型犬サイズがほとんどないのです。
サイズが合わなければ、きちんと胸骨に前胸のパーツが当たらず、ポリスハーネスのよさが失われてしまいます。
せっかくいい形のハーネスを見つけても、それが犬の体にぴったりしないのであれば、その犬にとっては「いいハーネス」とは言えません。
また、製造元の海外メーカーもそうたくさんあるわけではないので、デザイン選択の余地があまりないのもマイナスです。
デザインは犬にとってはどうでもいい部分でしょうが、購入者の飼い主さんからすると大事なポイントです。
どうせなら可愛いものを身に着けさせたいと思うのは、人間の正直な心理でしょう。

「本当はハーネスを使いたいけど、うちの子はどうしてもハーネスが嫌いで首輪を使うしかないの」という方も多くいらっしゃいます。
「かたいのがイヤ」「重いのがイヤ」「足を通すのがイヤ」「頭を通すのがイヤ」「押さえられる感じがイヤ」など、犬たちがハーネスを嫌いな理由は1頭1頭違うと思います。
その理由を出来るかぎり取り除くことで、犬が気持ちよくハーネスを使ってくれるようになったら、犬にとってもっと負担の少ないおさんぽが可能になります。
それぞれの理由に対応するには、その子その子のからだ、好みに合わせてハーネスを作る必要があります。
その子に合わせてハーネスを作るなら、サイズ調整のパーツは不要になります。
構造をシンプルにすることで、出来るかぎりの軽量化をはかることもできます。
ひとつひとつ作る以上「規格」というものはありませんから、どんなに小さいサイズでも作ることが出来るでしょう。


わたしは一頭でも多くの犬にポリスハーネスを使ってほしいと考えています。
もちろん自然散歩をおすすめしたいのですが、たとえ自然散歩をしなくても、首輪がポリスハーネスに変わるだけで少なくとも犬の首や喉がしまることはなくなるわけですから、そこを変えるだけでも無意味なことではないと思います。

そのためにわたしにできることは何か。

考えた先にたどり着いたのが、「手作りハーネスのお店」という答えでした。
ゴツい、重い、サイズやデザインの幅が狭い、というポリスハーネスの欠点を除き、犬にとっても人にとっても喜んでもらえるオーダーメイドのポリスハーネスを作ること。
それにより犬の首からひとつでも多くの首輪を取り去り、自然散歩というやり方を通じて犬の自由への扉をひらくこと。
これが、Yarn Yawn の使命だと考えています。

ハーネスをおつくりするときは、素材や太さはもちろん、留め具をテープにするかバックルにするか、頭を通すか足を通すかなど、その子の好みに合わせた調節を行います。
飼い主さんの利き手によって位置を変えることもできますし、犬の肌に触れる部分に生地の重なりが来ないような工夫もいたします。
色や柄、サイズのオーダーメイドは数多くありますが、「苦手な部分を取り除く」オーダーメイドは Yarn Yawn だけのものであると自負しています。
これまでハーネスが苦手だったわんちゃんも、一度だけ Yarn Yawn のハーネスを試してみていただきたいと思います。
微力ではありますが、あなたとあなたのわんちゃんがしあわせに暮らすお手伝いをさせてください。


ずいぶん長くなってしまいましたが、ようやく結論です。

3mのゆったりリードに、わんちゃんが気持ちよく受け入れてくれるポリスハーネス。
この組み合わせが、自然散歩の基本スタイルです!


自然散歩をすると決めるとき、わたしたちは犬との関わり方を改めて見つめなおし、おさんぽの時間だけでも自分の都合のよさよりも犬のしあわせを優先しようという選択をすることになります。
これはなかなか簡単なものではありません。
一度そうしようと思っても、忙しい毎日の中、気付くといつものおさんぽに戻っていたということは何度もあると思います。
慣れ親しんだ考え方を変えていくというのは、難しくもあり、辛いものでもあります。

でも、考え方を変えることは難しくても、道具なら簡単に変えられますね。
道具を変えることで少なくとも行動は変わらざるを得ませんし、行動が変わるうちに考え方が変わることもあるでしょう。
これまでよりリードを少し長くして、これまでの首輪をちょっと珍しいハーネスに変える。
それだけで、愛犬がだいぶ「自然でしあわせな犬」に近づいてきたような気がしませんか。
犬の自由を守り、犬の自然な行動を実現する力が、自分の中に湧いてくるように感じませんか。

半分くらいは気のせいかもしれませんが、それでいいのです。
「自然でしあわせな犬」という目標はあなたの心の中にしかないのですから、あなたのやる気だけが犬にとってのよりどころです。
あなたが犬の自由に対して前向きな気分になることが、自然散歩を充実したものにする近道なのです。

そして、これはいくら強調してもしたりないところなのですが、残りの半分くらいは決して気のせいなどではありません。
あなたがハーネスを選んだことによって、おさんぽ中に犬の首がしまることはもうありません。
リードが長くなったのは、犬の行動半径を広げたいというあなたの意志がなしたことです。
この紛れもない事実に、どうか自信と誇りを持ってください。


ハーネスとリードを着けた愛犬とお気に入りの緑地に降り立てば、とにもかくにも自然散歩のはじまりです!